笛の音色と共に…
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その8「篠笛の四の手孔」
人間国宝の寶山左衛門師が、亡くなる少し前に「最近の篠笛の四の手孔を小さくするのはなぜかね、窮屈な笛になってしまうね」と言って残念がられていました。四の音で右手の中指を押さえなくてよくするための幼稚な発想によるものだと思われますが、厳密な音程を要求するリコーダーですらそんなことはしていないでしょう。

伝統音楽を演奏する篠笛や尺八などは、単純な構造のままでメリ・カリの表現が大きくできることが楽器の命でしょう。一つの音の中でどれだけ豊かな表現ができるかが、演奏家の腕前なのです。

器用に西洋音楽の真似をしているだけでは、篠笛の本当の鳴りを知らない人間になってしまいます。楽曲と楽器は同じ様式の上に成り立っています。せっかく篠笛を持ったなら、伝統音楽を少しでも演奏してみましょう。

演奏する姿も、楽曲や楽器によって美しさが異なります。徹底して無駄な動きを無くした演奏姿勢には、右手の中指を押さえた四の音の指の動きは、色気を感ずるような美しさが見て取れます。四の手孔を小さくしてはだめなのです。
山田 藍山
藍ノ会
MOVIES'「篠笛を吹く」